5.映画会社のスタジオツアー
ロサンゼルスの映画にまつわる観光地を一通りさっと観光した後、次なる目標は映画の都ハリウッドにやってきたからにはヒット作を次から次へと創り出している夢工場である映画会社のスタジオ内の様子がどうなっているのか?是非ともこの目で見てみた~いと思うようになりました。
ユニバーサルスタジオ・ハリウッドの思い出
私が住んでいた1992年以前からロサンゼルスには「ユニバーサルスタジオ」があって、ここは映画の撮影する撮影場であるとともにテーマパークになっていましたので、ユニバーサルスタジオは比較的簡単に中に入れましたが、そのほかのメジャースタジオであるワーナーブラザース、ソニーピクチャーズ、パラマウント、20世紀フォックス社、ウォルト・ディズニーピクチャース、MGM社などはこの当時はスタジオ内を外部の人に見学させるということにはあまり積極的ではありませんんでした。
2020年の現在は、私が暮していた90年代よりどのメジャースタジオもかなり観光客向けのツアーの時間をしっかりと設けているようです。
基本、ディズニーランドは別としてテーマパークになっているのはユニバーサルスタジオだけでそれ以外は、それぞれの会社のスタジオの中を案内してくれるスタッフさんと一緒にスタジオの内部を歩きまたはトラムで回るツアーとなっていますので、日本からしっかりと予約を入れていった方がいいと思います。
ある日、日本から友人がロサンゼルスに遊びに来てくれた時に、一緒にユニバーサル・スタジオに遊びに行ったことがあるのですが、彼からどうして「バットマン」や「スーパーマン」のアトラクションがないのかなぁと尋ねられたことがあります。確かにユニバーサルスタジオにはいろいろなアトラクションがありますが、映画の「バットマン」「スーパーマン」のアトラクションがあればそれはきっと楽しいかもしれませんよね。でも映画というのは、創造物なので完成した作品の一つ一つに著作権という権利が発生します。簡単に言うと「バットマン」と「スーパーマン」が出てくる映画の権利はワーナー・ブラザースという映画会社が持っています。つまりワーナー・ブラザースの持ち物であってユニバーサルピクチャーズが勝手に使用する訳にはいかないのです。
だからユニバーサルピクチャーズの持ち物である「ジョーズ」「ジュラシック・パーク」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」などの映画はそのアトラクションをユニバーサルスタジオの中に創れてしまうわけです。
後年、ユニバーサルスタジオはワーナーブラザースが権利者である「ハリーポッターシリーズ」の町をユニバーサルスタジオの中に造りだす訳ですが、これは最大のライバルともいえるディズニーランドに対抗するためであり、その為にユニバーサルスタジオとしては、ワーナー側に多額の権利料を支払っている訳です。
私がハリウッドで暮らしていた1992年から95年の間ですとユニバーサルスタジオはハリウッドとフロリダの2ケ所にテーマパークがありました。その頃は新しいアトラクションはなぜかフロリダの方を先にオープンさせて後から同じものをハリウッドでもオープンさせるという手法を取っていました。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のライドも最初はフロリダで始まり、数ケ月後にハリウッドで同じライドが始りました。
後に、日本の大阪にユニバーサルスタジオジャパンがオープンしますが、わざわざアメリカに行かなくてもユニバーサルスタジオのアトラクションを現場のクオリティそのままに大阪で楽しめるようになったことはとても嬉しいことです。
当時あまり日本では馴染みのなかったアメリカのイベント「ハロウィン」ですが、私はユニバーサルスタジオハリウッドでこの独特のイベントを楽しむことが出来ました。その時期になると特別に昼間の部を一旦閉めて夜にまた入場門を開けるのですが、私が最初に参加した「ハロウィンナイト92」は日本では味わったことのない園内全体が本格的なエンタテインメントショーに包まれた感じのイベントとなっていました。
「ハロウィンナイト92」のチケットを夫婦2枚分、前もって購入して、再入場で門が開いて少し暗くなりだした園内に入っていくと、おぞましいメイクをしたゾンビたちがさまよい歩いていたり、スタジオの建て物の2階の窓から声がすると思って見上げるとそこには「チャイルドプレイ」のチャッキー人形が顔を出していて行きかう人々をからかっていたり、この期間だけに特別に作られた「おばけ屋敷」があったり、昼間とはがらりと違う「怖さを醸し出す演出の数々」で観客を楽しませてくれます。昼間同様にトラムに乗って園内を回るコースがありましたが、趣は昼間とはがらっと変わっていてみんなでトラムに乗り込むと、そのトラムはわざわざ暗い道に入っていき、まるで集団肝試しのような感じなのです。暗い道を進んでいくと前方に衝突して大破したパトカーが煙を上げていて、みんながライトに浮かび上がっているそのパトカーを「どうしたんだろう?」と身を乗り出して見ようとすると、その次の瞬間、いきなりチェーンソォー(電気ノコギリ)の轟音が鳴り響いて「悪魔のはらわた」のメイクをした役者がチェーンソォーをぶんぶん言わせながらトラムに走りよってきて乗客を驚かせるのです。ショーの一部だとは分かってはいるものの暗闇の中でチェーンソォーの鳴り響く音を聞くというのはあまり気持ちのいいものではありませんでした。おそらく音だけするおもちゃだとは思いますが、かなりのリアリティさだったので、中々もって興奮冷めやらぬままトラムライドは続いていきました。
この「ハロウィンナイト92」の時期というのは、折しも、スティーブン・スピルバーグが「ジュラシック・パーク1」の撮影を巨大なスタジオ内で行っていた時期でもあったのでトラムに乗っていたガイドさんが「もしかするとスピルバーグ監督が近くを歩いているかもしれませんよ。」とマイクを通して話してくれたので乗客たちもそんな訳はないだろうと分かりつつも妙に盛り上がっておりました。
トラムが巨大なスタジオの横で止まってくれて、横の扉が開けられていたのでそこから巨大スタジオの中の様子を見ることが出来たのですが、スタジオの高い天井部分にある多くの照明の光に照らされて森というよりもジャングルのセットが組まれていて、その植物の多さとジャングルらしき場所の広さに圧倒されました。スタッフや関係者は休憩中なのかスタジオの中は明るいのですが人がいる気配はありませんでした。セットのドデカさと見事なまでにジャングルを再現しているその精巧さに触れた時、スピルバーグがまたもトンデモない作品を撮影しているに違いないと確信しました。やっぱりその通りで翌年に公開された「ジュラシックパーク」(1993年度作品)は記録的な大ヒットになり、自分もハリウッドの劇場でその作品を観た時、恐竜のリアルさと吠える声の大きさに全身がぶっ飛ばされたような衝撃がありました。
つづく