一流人じゃなくても夢は叶えられる!

英語を学び、映画を見まくったことで夢は叶えられた!

ロサンゼルス駐在生活体験記:コリアンのジェイ先生【再掲載005】               

3.コリアンのジェイ先生(のつづき)

「あなたの運転はひどい。メチャクチャです!   基礎からじっくりやり直しましょう!」これはロサンゼルスで最初の運転の授業の時にジェイ先生からぶつけられた痛烈な言葉でした。なんだか、いきなり両方の頬に思いっきりビンタを喰らったかのような衝撃でした。

上はあくまでイメージ画像です。この作品はErika WittliebによるPixabayからの画像。

そして、車を停めたまま初歩の初歩。ハンドルの握り方からスタートしました。手の位置から始まり、ハンドルの回し方、その戻し方。レーンチェンジの時の目線の置き方、どこをどうみて、確認すべきことは何であり、どこを見るべきなのか?事細かくチェックすべき点を教わりました。それはそれは、かなり口うるさかったのでした。

「では、また少し走ってみましょう!」と言われて走行を再開したのですが、一度に注意すべき点をめいっぱい指摘されたので、脳がついていけなくなり極度の緊張から体の強張りはもうMAXになっていてうまく走れなくなっていました。この日は2時間の教習でしたが、終わる頃には、精神的にぐったりしてしまい、こんなシンドイ教習が連日続いていくのかと思うとただただ気が重くなるのでした。仕事の引継ぎ業務もあるというのに。

どれだけ辛かろうとも一日も早く運転をマスターしなければ仕事も出来ない訳なので「弱音を吐いている場合ではない」と嘆くことは止めることにしました。それからは、仕事の引継ぎ業務をしながら、日々ジェイ先生の特訓を受ける日々が続いていきました。

その後、ジェイ先生の口の悪さ、口のうるささは日を追うごとにエスカレートしていき、連日以下のような言葉を浴びせられました。

 「走っている時には15秒に一度は絶えずリアミラーを見なさい!」

 「右折する時、左から車が来ていないかどうかだけを確認すればよい! 正面をみたり、右を見なくてもよいのです。」

「前の車とは十分に距離を取りなさい。車一台がすっぽり間に入るようにしなさい。」

「スピードが遅すぎます。亀じゃないんだから!ハイ、スピードを   スゥっと上げていきなさい。ハイ、アクセレレイター!」

ジョイ先生は、教えたことを私が守れなかったり出来なかったりすると其の度毎にこちらが落ち込むような言葉をぶつけてきます。連日繰り返される厳しい授業が終わるたびに「俺はどうしてこの先生を選んでしまったのだろう?中には優しい女性の先生もいるらしいのに。」と後悔の念がふつふつを起こってくるのですが「仕方がない、しゃーない。」とへこたれそうになる気持ちを立て直しては、ビートたけし顔のジェイ先生に強い気持ちで挑んでいく日々を続けていきました。

そして、そんな厳しい授業を何日か続けて、ようやくある程度先生の言葉通りに車が操れるようになったある日のこと。先生がいきなり「高岡さん、今日はフリーウェイに乗りましょう。」と言ってきました。私は思わず「えっ、先生もうですか?」と言ってしまいました。すると先生は

「『もう』です。この『もう』は猛スピード』の『もう』です。」

 

そう言うジェイ先生の横顔はうっすらとどや顔をしていました。

そして、先生は私たちの乗る教習車をフリーウェイ方面へと誘導していきました。私が日本で運転免許をとった昭和の時代は教習コースの中に「高速道路を走る」というコースがなかったのでまさにその日が生まれて初めて自分の運転でフリーウェイを走るということになりました。正直行きたくなかったのですが、先生の誘導でフリーウェイのエントランスへと向かいました。そして、覚悟を決めてフリーウェイの入り口に入っていったはみたものの、スピードの出し方が分からず一般道路と同じスピードで突入してしまいました。するとすぐ後方から大きなアメ車が物凄いスピードで突進してきて、我々のすぐ後ろまで迫ってきたのです。一瞬ですが、ジェイ先生の顔が引きつったのが分かりました。ジェイ先生が慌てて私の足をつかんでグイっと押し込んできて

「高岡さん!アクセルをぐぅっともっと踏み込んで!!もとともととスピードを上げてアクセレレイター!」

「もとともとと」って何なんだよと思いつつも、私も必死になってアクセルを踏みこみました。今までの人生で一番早いスピードを出すつもりで。フリーウェイの中に入ると、後ろにいた車の金髪長髪のドライバーが我々に向かって大きな声で怒鳴りながら横を通りすぎていきました。その車はもの凄いスピードで遠ざかってはいきましたが、横のレーン、その更に横のレーンももの凄いスピードで車が走っているわけで怖さと驚きでうな垂れそうになる頭をしっかりと固定させて必死にハンドルを握りしめている私に

「はい、高岡さん。気にしない、気にしない。 ハイ、この道でいいからスピードをもっと上げて!ハイ、アクセレレイター!」

そう言っているジェイ先生も顔が引きつっており、眉間にしわがよった状態でしっかりと席に深く座り直していました。それからその日は二人して無言になり、もちろん私は車線変更など出来るわけもなくフリーウェイに入ったそのレーンをただひたすらまっすぐに走っていきました。自分では意識していないのですが、怖くてスピードが出せないので、車の走っている速度がすぐに一般道路並みの速度まで落ちてきてしまうのです。

「高岡さん、遅すぎよ。スピードメーターを見てみてみてみて。ほどよく40マイル(64キロ)くらいは出してくれないの!

「出してはくれない!」って、そのジェイ先生のおかしな日本に笑いを堪えつつ、初めてのフリーウェイなので怖くて情けないことに中々その40マイルが出せないです。出せないでいるとまたジェイ先生が私の右足をグイィっと押して「アクセレレイター」と叫ぶのです。それからかなりの距離をただただまっすぐにまっすぐにとずんずんずんずんと進んでいきました。ただひたすらに走って走って、時間の方も飛ぶように過ぎていきました。

もうだいぶ時間も経ちました。4,50分ひたすら走ったでしょうか、ようやくジェイ先生が「ハイ、高岡さん、一旦、フリーフェイを降りましょう。」と言ってきました。乗るのが初めてなんだから降りるのなんかどうすればいいのかまったく分からず「えっ、先生、降りるんですか?」と聞いたところ

「降りないで、あなたこのままどこまで走り続けるんですか?」

とちょっと怒り気味の答えが返ってきました

 

笑いたいのに笑えない状況であり、フリーウェイを緊張して走り続けてもいるので、体がコチッコチの膠着状態だったので一般道路に降りられることは一つの救いではありました。Uターンをして先程までずっと走ってきたフリーウェイの道を今度はひたすらに帰っていくということでその日の教習は終了しました。

ただただ恐怖と膠着状態の2時間弱でした。その日の授業終わりにジェイ先生は次のように言いました。

「高岡さん、今日は初めてフリーウェイに乗りましたが、私がいなかったらあなたはおそらく死んでいたかもしたですね。死なない場合、フリーウェイを降りてUターンする事が出来ずにどこまでもどこまでもまっすぐに走っていき、サンディエゴかメキシコまで行っ~てしまっていたんですよ、きっと!」

そりゃ、あれだけひたすらに真っすぐに走り続けていたとしたら「きっとそんなことにもなるわな」と想像すると笑いたくなったのですが、ジェイ先生の目がまたしてもじっとあらぬ方向をみて笑っていなかったので、うつ向いて笑いそうになっている自分の横顔を必死に見られないように隠しておりました。 つづく