一流人じゃなくても夢は叶えられる!

英語を学び、映画を見まくったことで夢は叶えられた!

【英語/映画/旅行好きの方向け】ロサンゼルス駐在生活体験記 012ロサンゼルス暴動の眠れぬ夜              

 第2章 たまげた町だ、ロサンゼルス!

1.ロサンゼルス暴動の眠れぬ夜(のつづき)

 そうこうしているうちに我々の住むパーク・ラブレアのビルの上空にもヘリコプターがかなり高度を下げて二機、三機と騒々しく飛び交い、近くの通りにはパトカーと消防車のサイレンの音が激しく響き渡りだしたので、妻もようやく事の重体さに気づいたらしく、その時はもうかなり険しい顔をしていました。

暴徒と化した一団が車に乗って移動しながら町のあちらこちらに火を放っているらしく火災の件数は増える一方で、ニュースの中で私たちが暮している場所からそう遠くない通りの名前もレポートされ始めました。驚いたのは、私がさっきまでいた会社事務所のすぐ近くのレストランあたりにも放火されたということが分かり、そういう状況となっているのであれば、いつ何時、パーク・ラブレアの中にまで暴徒たちが押し寄せてくるかもしれないという不安が起こり、居ても立っても居られなくなってきたのですが、かと言ってどうすることも出来ずにただただ近くに暴徒たちがやってこないことを祈るのみでした。9時か10時か時間は定かではありませんが、テレビの報道ではどうもトム・ブラッドリー市長が軍に対して二千人の兵士の派遣を要請したようでした。その時間帯のニュースで、この暴動は、サウスセントラル地区を中心に勃発したのだということが分かってきました。その後、暴徒たちが走りまわっている車を締め出す為にロスのフリーウェイ(高速道路)の出口をすべて封鎖しました。

夜の11時あたりになってくると放火ばかりでなく、このどさくさに紛れてスーパーマーケットに押し入り盗みを働く一団が現れて、自由勝手に店から品物を盗みだす姿は目に余るものがありました。しかし、もはやその横暴さは誰にも止められない勢いとなっていました。またギャング団がガンショップに押し入り1700丁もの銃を強奪したとの報道もありました。パーク・ラブレアの中は静まりかえっているように思えましたが、ヘリや救急車、それにパトカーのサイレンの音はそのけたたましさを増していくばかりでした。

今まで経験したことのないこの異常事態に成す術もなく部屋の電気をすべて消して、ただテレビを見続けていくことしか出来ませんでした。次々に画面に映し出されるショッキングな映像に恐怖を覚え、夜の闇が更に深まっていく中、表情ばかりか体全体が硬直していくのが分かりました。自分たちの住居ビルが暴徒たちの標的にならないとも限らないという恐さから夫婦二人して寝るに寝れない状況となっていました。

帰宅してから、ひたすらテレビを見続けていたわけですが、知らないうちにとっくに日付は変わっていました。サイレンはまったく止む気配はなく事態はまだまだ進行中といった状況で、同じ映像ばかりを流しだしたテレビをこれ以上見続けることに意味があるのだろうかと思い妻の顔を見るととても疲れた顔をしていたので家内には「なにかあったらすぐに起こすから。」と言って、先に寝てもらうことにしました。

ふと我に返るとまだ夕飯を食べていなかったことに気づくと急に空腹感が襲ってきたので、冷蔵庫から食べ物を物色してとりあえず腹に入れました。そんな中、少しテレビ報道に変化がありました。

「日の出の2時間前まではすべての明かりを消すように」という消灯令と外出禁止令が出されたようでした。

火災の炎で照らされている場所以外は、いつもより町全体が深い闇に包みこまれていました。

4月30日の午前零時から3時までの間に放火が1分間に3件の割合で報告され、無人の店舗に押し入っては略奪を続けている暴徒の数は増え続けていました。

深夜2時をまわった頃、私たちが暮す13階建ての高層アパートのすぐ上空に轟音とともに警察のヘリが現れました。ヘリは何者かを追っているのか、物凄く明るいサーチライトを地面を這うように照らしながらけたたましい轟音を響かせながらこれでもかという位、低空まで降りてきてゆっくりと小さく旋回をし始めました。私は恐る恐る8階の家のリビングの窓のカーテンの隙間からその様子を見ていると、ヘリから発せられている白く眩しいサーチライトは地上に達すると広い大きな円になり、獲物を探しているかのように、地面を上下左右に照らし出していました。

「自分の自宅のすぐ上をヘリコプターが低空で旋回してサーチライトで何者かを探すなんて光景は映画やドラマの中でしか見た事ないよ。これって現実?  それとも疲れて寝てしまって夢の中の光景?

 「こんなことが現実にあっていいのか?」と思ってはみたものの、驚きを通り越した状態に唖然としながら

  「とんでもない町に来ちまったなぁ。」

「始まったばかりの駐在生活が、こんなことになるなんて。」 やもすると心がネガティブになりそうでしたが、目の前の出来事はすべて現実であることには間違いがないわけで、それに私は日本の本社から支社をしっかり運営するように任されて来ている訳なので、自分しかいないという状況の中、責任感を持って対処すべき時とは正にこういう時ではないかと思いました。そう考えれば弱気になどなっている暇はなく、明日は朝一番で日本の本社へ電話連絡を行い、我々夫婦が無事であることを報告し、この状況下では正常な業務を行うことは難しいので、まずはロス支社のオフィスに行き、会社の大切な株式証券やら重要な書類を家に持ち返ってきてそのまま自宅内勤務(待機)することを認めてもらうことにしました。

その後、ヘリは数回大きく旋回して北の方角へと飛び去って行きましたが、もしや我々の敷地内に暴徒が潜んでいるのではないかと思うと神経が知らず知らずのうちにぴりぴりと張りつめていました。

私はその後も明け方まで長時間テレビを見続けていました。 警察のヘリが、数回、頭上を通過していったのがうっすらと記憶にあるのですが、いつしかどっと眠気に襲われてその場に眠りこんでしまいました。

 

そして、いつしか外が白じんできていました。

つづく