一流人じゃなくても夢は叶えられる!

英語を学び、映画を見まくったことで夢は叶えられた!

【英語/映画/旅行が好きな方向け】ロサンゼルス駐在生活体験記 005              

3.コリアンのジェイ先生(のつづき)

ジェイ先生はやたらと「アクセレレイター」という言葉を使うのですが「アクセル」という言葉は日本人が作った造語であって本当は「アクセレレイターというんだよ。」と言った時も、どや顔をされていました。しばらくすると、道端に車を停めるように言われました。そして、私の運転に対するコメントが始まりました。「あなたの運転はひどい。メチャクチャです!   基礎からじっくりやり直しましょう!」

そして、車を停めたまま初歩の初歩。ハンドルの握り方からスタートです。手の位置から始まり、ハンドルの回し方、その戻し方。レーンチェンジの時の目線の置き方、どこをどうみて、確認すべきことは何なのか?事細かくチェックすべき点を教わりました。

 「では、また少し走ってみましょう!」と言われて走行を再開したのですが、一度に注意すべき点をめいっぱい指摘されたので、脳がついていけなくなり極度の緊張から体のこわ張りはもうMAXになって、ますますうまく走れなくなってしまいました。この日は2時間の教習でしたが、終わる頃には、精神的にぐったりしてしまい、こんなシンドイ教習が連日続いていくのかと思うとただただ気が重くなるのでした。

どれだけ辛かろうとも一日も早く運転をマスターしなければならないので弱音を吐くのは止めることにしました。それからは、仕事の引継ぎ業務をしながら、日々ジェイ先生の特訓を受け続けました。

その後、ジェイ先生の口の悪さ、口のうるささは日を追うごとにエスカレートしていき、連日以下のような言葉を浴びせられました。

 「走っている時には15秒に一度は絶えずバックミラーを見なさい!」

 「右折する時、左から車が来ていないかどうかだけを確認すればよい!

   正面をみたり、右を見なくてもよいのです。」

「前の車とは十分に距離を取りなさい。車一台がすっぽり間に入る

   ようにしなさい。」

「スピードが遅すぎます。亀じゃないんだから!ハイ、スピードを

   スゥっと上げていきなさい。ハイ、アクセレレイター!」

ジョイ先生は、教えたことを私が守れなかったり出来なかったりすると其の度毎にこちらが落ち込むような言葉をぶつけてきます。連日繰り返される厳しい授業が終わるたびに「俺はどうしてこの先生を選んでしまったのだろう?中には優しい女性の先生もいるらしいのに。」と後悔の念がふつふつを起こってくるのですが「仕方がない、しゃーない。」と自ら強くへこたれそうになる気持ちを立て直しては、ビートたけし顔のジェイ先生に挑んでいく日々を続けていきました。そして、ようやくある程度先生の言葉通りに車が操れるようになったある日のこと。先生がいきなり「高岡さん、今日はフリーウェイに乗りましょう。」と言ってきました。私は思わずえっ、先生もうですか?」と言ってしまいました。「『もう』です。この『もう』『猛スピード』の『もう』なんです。」そう言うジェイ先生の横顔はうっすらとどや顔をしていました。

そして、先生は教習車をフリーウェイ方面へと誘導していきました。私が日本で運転免許をとった昭和の時代は教習コースの中に高速道路を走るというコースがなかったのでまさにその日が生まれて初めて自分の運転でフリーウェイを走るということになりました。正直行きたくなかったのですが、先生の誘導でフリーウェイのエントランスへと向かいました。そして、覚悟を決めてフリーウェイの入り口に入っていったはみたものの、スピードの出し方が分からず一般道路と同じスピードで突入してしまいました。 するとすぐ後方から大きなアメ車が物凄いスピードで突進してきて、我々のすぐ後ろまで迫ってきたのです。一瞬ですが、ジェイ先生の顔が引きつったのが分かりました。ジェイ先生が慌てて私の足をつかんでグイっと押し込んできて、「高岡さん!アクセルをぐぅっともっと踏み込んで!!もとともととスピードを上げてアクセレレイター!」

「もとともとと」って何なんだよと思いつつも、私も必死になってアクセルを踏みこみました。今までの人生で一番早いスピードを出すつもりで。フリーウェイの中に入ると、後ろにいた車のドライバーが我々に向かって大きな声で怒鳴りながら横を通りすぎていきました。その車はもの凄いスピードで遠ざかってはいきましたが、横のレーン、その更に横のレーンももの凄いスピードで車が走っているわけで怖さと驚きでうな垂れながらも必死にハンドルを握りしめている私にはい、高岡さん。気にしない、

気にしない。 ハイ、この道でいいからスピードをもっと上げて!ハイ、アクセレレイター!」う言っているジェイ先生も、顔は少しも笑っておらず少しぐったりしながら席に深く座り直していました。それからその日は二人して無言になり、もちろん私は車線変更など出来るわけもなく入ったそのレーンをただひたすらまっすぐに走っていきました。自分では意識していないのですが、怖くてスピードが出せないのですぐにまた一般道路並みの速度まで落ちてきてしまい「高岡さん、遅すぎるよ。スピードメーターを見てみてみて。ほどよく40マイル(64キロ)くらいは出してください。」とジェイ先生はいうのですが、初めてで怖いので情けないことに中々その40マイルが出せないです。出せないでいるとまたジェイ先生が私の右足をグイィっと押して「アクセレレイター」と叫ぶのです。それからかなりの距離をただただまっすぐにまっすぐにとずんずんずんずんと進んでいきました。ただひたすらに走って走って、時間の方も飛ぶように過ぎていきました。

もうだいぶ時間も経ち距離も走ったところで、ようやくジェイ先生が「ハイ、高岡さん、一旦、フリーフェイを降りましょう。」と言ってきました。乗るのが初めてなんだら降りるのなんかどうすればいいのか分かるはずもなく「えっ、先生、降りるんですか?」と聞いたところ「降りないで、あなたこのままどこまで行くんですか?」と怒り気味の答えが返ってきました(体が膠着していたので笑うに笑えない状況でした)。

Uターンをして帰ってくるということでその日の教習はようやく終了となりました。その日の授業終わりにジェイ先生は次のように言いました。

高岡さん、今日は初めてフリーウェイに乗りましたが私がいなかったらあなたは死んでいましたね。死ななくてもフリーウェイを降りてUターンする事が出来ずにどこまでもまっすぐに行っていたことでしょうね、きっと。」

つづく

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