5.ジョン・ウィリアムズのコンサートは映画空間そのものだったぞ!! その2
場内全体が暗くなり、舞台の上だけが明るいのですが、それが一層明るくみえてスポットライトが左手に当たったかと思うと、その光の中に右手を上げながら白いタキシードと蝶ネクタイ姿のジョン・ウィリアムズ氏がいよいよ登場してきました。会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれました。
双眼鏡で見る彼はふくよかでとても穏やかで優しい顔をしていました。舞台中央の指揮台の上に歩み寄るとほんのちょっと観客に会釈をしたかと思うとオーケストラの方を向いて高々と右手を上げました。すると観客席の全員が立ち上がり始めました。そうです、国歌斉唱です!国歌斉唱が終わると、休むことなく一曲目の「オリンピック ファンファーレ」に突入していきました。そして、どんどんと素晴らしいメロディーの数々の演奏されていきます。
3曲目の「ザ・リバー」では拍手とともにバージェス・メレディスが舞台に登場してきました。その時の彼はもう87歳になっていました。1990年に公開された「ロッキー5」ではワンシーンだけロッキーが回想するシーンに登場していましたが、私も彼の顔を見るのはそれ以来でした。「ロッキー」シリーズを通してずっと彼を見てきましたがやはり今まで見た中で一番背が丸まっているように思いました。演奏に合わせる形で彼がナレーションを入れるのですが、やはり名優だけあってとても味があり、音楽とその語り口がとてもマッチしてとても感動的でした。
途中で休憩がありましたが、次々と演奏されていく名曲の数々にただただ私は酔いしれました。ジョン・ウィリアムズ本人がそこにいて指揮をとり、そこで奏でられていく「スター・ウォーズ」や「インディ・ジョーンズ」「ジュラシック・パーク」のテーマ曲が聴けることの喜びで感無量になってしまい目には嬉し涙が自然と溢れてきてしまいました。
演目の最後は「E.T.」でした。この演奏も最高でした。そして、最後の演奏を終えたジョン・ウィリアムズ氏に対して観客は惜しみない拍手を送ります。観客に挨拶をしながら舞台の袖へとジョン・ウィリアムズ氏は消えていきました。しかししかしです、アンコールの拍手がどこからともなく起こってきて、アンコールの大合唱になっていくと、再びジョン・ウィリアムズ氏が舞台に登場し指揮台に上がってくれました。そして彼がアンコールとして演奏を始めてくれた曲は演目にはなかった「ジョーズ」でした。あの低音でサメが近づいてくる時のテーマ曲が始まると観客席のあちらこちらから何だかクスクスという笑い声が聞こえてきて、指笛をならす輩もおりました。そして、曲調が人を襲おうかというシーンで使われる旋律の部分になった時に観客の若者の一人が「キャー」っと叫んだものですから場内には大爆笑が起こり「なんだなんだ?」という顔でジョン・ウィリアムズも何事かとタクトを振りながら後ろを振り向いて頭を横に二度三度振っていました。「ジョーズ」の演奏が終わると彼を指揮台から降ろさないぞとばかりに「アンコール」を求める拍手が鳴りやみません。分かったというような顔をするジョン・ウィリアムズ氏。
そして、再びタクトを振り降ろすと今度は「スーパーマン」のテーマ曲が聞こえてきました。もう子供たちは大騒ぎで「オーマイ。オーマイ」と大声で歓声を上げて演奏に反応しています。盛り上りはこの日最高潮を迎えました。こうしてハリウッドボウルでの夢のような演奏会の夜は更けていったのでした。
ジョン・ウィリアムズが手がけた スピルバーグ作品
1975年「ジョーズ」
1977年「未知との遭遇」
1979年「1941」
1981年「レイダース/失われたアーク」
1982年「E.T.」
1984年「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」
1987年「太陽の帝国」
1989年「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」
1992年「フック」
1993年「ジュラシック・パーク」
1993年「シンドラーのリスト」
1997年「アミスタッド」
1997年「ロスト・ワールド」
1998年「プライベート・ライアン」
2001年「A.I.」
2002年「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」
2002年「マイノリティ・リポート」
2004年「ターミナル」
2005年「宇宙戦争」
2005年「ミュンヘン」
2008年「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」
2011年「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」
2011年「戦火の馬」
2012年「リンカーン」
2016年「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」
2017年「ペンタゴン・ペーパーズ/最高秘密文書」
※アカデミー賞作曲賞を受賞しているのは 「ジョーズ」「E.T.」「シンドラーのリスト」です。「ブリッジ・オブ・スパイ」「レディ・プレイヤー1」ではスケジュールと健康上の理由からジョン・ウィリアムズは参加していません。
来年2021年公開予定の「インディージョーンズ5」ではジョン・ウィリアムズ氏が作曲を担当する予定ですが、スピルバーグの監督作品ではありません。監督はジェームズ・マンゴールドです。
TOTOのボーカリストのジョセフ・ウィリアムズは彼の息子である。
つづく